女番長ブルース 牝蜂の逆襲
爆音たてて、一台!また一台!女と男が走るオートバイ上で絡み合う。
1972年 カラー シネマスコープ 84min 東映京都
企画 岡田茂、天尾完次 監督、脚本 鈴木則文 助監督、脚本 皆川隆之 撮影 古谷伸 音楽 鏑木創 美術 井川徳道 録音 堀場一朗 照明 若木得二 編集 神田忠男 スチール 諸角良男
出演 池玲子、賀川雪絵、杉本美樹、一の瀬レナ、河崎いち子、西来路ひろみ、山田みどり、滝俊介
渡辺やよい、天知茂、小松方正、流健二郎、ピーター、片桐竜次、山城新伍、安部徹、名和宏
左とん平、中村錦司、由利徹、大泉滉、成瀬正孝

ネオン灯りで化粧して、粋に与太ればハートが燃える!ねりかん破りの牝蜂八匹!その名はアテネ団!番を切ります女番長・池玲子!大型ポルノ女優として注目を集めた池玲子主演『女番長(スケバン)ブルース』シリーズ第1弾。オートバイセックス、強姦、リンチ、万引き、車盗み、脅迫、喧嘩と非行の限りつくすアテネ団の女番長玲子が、暴力団予備軍と学生愚連隊の三つ巴の抗争を展開しながら、殺された仲間のために暴力団秋本組に挑戦していく。池玲子の豊満なエロチシズムとセックスを前面に、剣鍔、チェーン、カミソリによる緊迫の喧嘩仁義などを取り入れて、『温泉みみず芸者』の鬼才鈴木則文監督がセックスとカーアクションで描いたポルノアクション。ズベ公たちの破壊的な行動が既成のルールをぶち壊していく斬新な脚本は以降シリーズ4作を手掛け、本作では助監督としても参加している皆川隆之が鈴木監督と共同で執筆。撮影は『緋牡丹博徒』シリーズのベテラン古谷伸が担当しておりクライマックスにおける池玲子の殴り合いを手持ちカメラで長廻しするシーンは迫力溢れる名シーンとなった。また、池玲子に処女膜を自分で破っちまいな!と、言われる新人スケバンを演じるのが、日活で『新・ハレンチ学園』の主役に抜擢されながらも、ロマンポルノへの路線変更から東映に移籍したばかりの渡辺やよい。彼女の力強くしっかりとした演技が見事女同士の演技合戦に火花を散らしてくれた。

関西を根城にするやさぐれグループ“アテネ団”の女番長玲子(池玲子)は、真弓、サセ子、モコ、おたえ、妙子ら団員を従えて、万引き、喧嘩、ギャンブル、自動車泥棒と非行の限りをつくしている。阪神連合会長の跡目を狙う秋本組組長・秋本剛(安部徹)は勢力を拡大するための手段として、そんな北神会やアテネ団を適当に利用していた。秋本組では急に三千万の金が必要となり、高利貸のご気嫌をとるため、北神会の次郎を介して、一夜玲子をその相手に当てがおうとしたが、英二(滝俊介)たちと遊んでいた玲子は次郎との約束をすっぽかしてしまう。次郎の面目は丸つぶれだが、団の統制を乱したかどで、玲子はモーターボートにロープでつながれ水上スキーさながらのリンチを受ける。こうして高利貸からの借入れに失敗した秋本は、塩酸フェニールから1キロ2億円もする覚醒剤が作れるという事を知るや英二が秋本に盾ついたとの口実を理由に彼を人質にして父親の康平をゆすり、フェニールをださせようとする。トップ屋中島からこの情報をキャッチした玲子、次郎たちは、秋本に一泡ふかせようと、現場に先廻りするが、英二を救ってフェニールの入ったカバンを奪取しようとした次郎は殺されてしまう。英二はカバンを奪い返すと玲子をオートバイに乗せ、後を追ってきた秋本の車をヘアピンカーブから崖下に落す。翌日、トップモードを身につけたアテネ団の面々は何事もなかったように町を闊歩していた。

日本のラス・メイヤーとでも言おうか、東映プログラムピクチャーの旗手・鈴木則文監督と日本のウルトラビクセン池玲子の人気ピンキーバイオレンス。最後までギラギラしたパワーをキープしつつ観ながらにして、その暑さに汗をかく映画ってそうそう無い。当時、大映や日活もスケバンものや女アウトロー映画を作っていたが、東映は、あくまでもポルノ性にこだわり、ある意味脱ぐのを前提に物語をつけていたように思える。とにかく、意味も無く出演している女の子達の脱ぐこと脱ぐこと…。思えば昭和40年代、芸能人水泳大会でも深夜番組でも名も知らない女の子達の裸に支えられていた。だからだろうか?あまりにもあっけらかんと潔く裸身を曝す彼女らの姿は明るく、新しい日本のパワーを感じる。それに続けと共演する名もなき女の子たちも負けずに堂々とした脱ぎっぷりを披露してくれる。出演者たちの明るさに、皆が楽しんで映画を作り上げているのが伝わり、強引な設定だろうがデタラメな展開だろうが、それはそれでイイんじゃないかと温かい目で観てしまう。
本作は、東映ピンク路線が順調に稼働し始めた頃に製作されただけあって、内容の無茶ぶりは止まる事を知らない。『温泉みみず芸者』に引き続き鈴木ワールドが更に拍車をかけ、パワー全開の弾けまくったセリフのオンパレードが続く。池玲子のハスキーボイスと安っぽいメイクがB級お色気アクションにピッタリはまる。中でも凄いのは、皆川隆之の脚本による台詞の数々。池演じる玲子(そのまんまじゃん!)の元に仲間入りしたいと頼みにくる女の子に「あんた…見たところ処女だね。そんなもん自分で破っちゃいな!」という意味不明な台詞だ。そんなもんを大事にしているから男に舐められるという事なのだろうか?それだけではない玲子を助ける暴走族のリーダーが「カーセックスはもう古い!これからは、オートバイセックスの時代だ!」と高らかに唱うと、女の子たちをバイクに乗せたヤローたちが、一斉に走らせながらセックスしてしまうのだ。
関西を根城に、恐喝、かっぱらい、ゆすり、たかり…と悪い事なら何でもやってしまうスケバングループ“アテネ団”(このネーミングも昭和40年代でイイ感じなのだ)ヤクザ組織の陰謀に巻き込まれ、自分たちの悪行は棚に上げて真っ向から対峙するのが骨子となる物語。そこに、愚連隊だの暴走族だのが入り乱れて、何のためか良く分からない抗争を繰り広げる。何か、イイ台詞を言っているのだが、よくよく考えたら…さっき言ってた事と違うだろー!と、思わずツッコミを入れたくなる。わずか90分足らずに映画3本分のエッセンスを詰め込む!これぞ、B級アクション映画の醍醐味!レストランでランチを注文したらカレーとチャーシュー麺とカツ丼がひとつの皿にてんこ盛りで出されたようなもの。だから、ストーリーの前後に無理が生じるのは仕方のない事。言っておくが、この面白さに乗れない人種は、最初から最後まで??????で終わってしまうのでオススメしない。
ラスト、グループを去る賀川雪絵演じる恐喝のジュンに「一人じゃ寂しいじゃん」と引き止める玲子に返すセリフ。「みんなといる方が寂しい人間だっているんだ」。
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