現代ポルノ伝 先天性淫婦
ここは純白の盆ゴザの上。剥がされ犯され声をあげる熱い肌。

1971年 カラー シネマスコープ 86min 東映京都
企画 天尾完次 監督、脚本 鈴木則文 助監督 依田智臣 脚本 掛札昌裕 撮影 赤塚滋 
音楽 鏑木創 美術 雨森義充 録音 堀場一朗 照明 金子凱美 編集 堀池幸三 スチール 諸角良男
出演 池玲子、三原葉子、宮内洋、サンドラ・ジュリアン、三枝美恵子、藤木孝、小池朝雄、川谷拓三
小島慶四郎、北村英三、岡部正純、渡辺やよい、遠藤辰雄、女屋実和子、渡辺文雄、山田みどり


 フランスの『色情日記』の主演ポルノ女優サンドラ・ジュリアンと『温泉みみず芸者』でデビューを飾り人気上昇中だった池玲子が共演。母親譲りの淫蕩の血を受け継ぐヒロインが、純真な心と相反する肉体の欲望に翻弄されながらも様々なセックスを体験していく。マスコミ界を騒がせて日仏2大ポルノ女優が濃厚19シーンに縺れ合う絢爛極致のポルノ映画の傑作。当初サンドラの出演を前提にして企画された作品だったが、彼女が来日出来るかどうか?が不確実だったため、彼女が出演出来なくても成り立つストーリーを考えたという。監督は脚本も執筆している『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』の鈴木則文。脚本は前作『温泉みみず芸者』以来鈴木監督とコンビを組む掛札昌裕。撮影は『まむしの兄弟 お礼参り』の赤塚滋が担当し、サンドラの幻想シーンで彼女の身体を青刺の男たちが陵辱する真俯瞰からの見事な映像を作り上げている。


 東京の聖南女子学園に在学する尾野寺由紀(池玲子)の肉体には京都でバーを経営する母絹枝(三原葉子)の淫蕩な血が流れていた。休みを利用して帰郷した由紀は、母の情夫安川に強姦され処女を失ったため、全てを捨て、小中企業の会社で働く決心をした。やがてヤクザの大幹部大場(小池朝雄)と同棲するようになり、高級クラブで働くようになった。その間、大場は喧嘩で重傷を負い、みるかげもなく落ちぶれていった。傷が原因で性の営みが不能になった大場の愛撫に悶える由紀は、肉欲のおも向くまま男をあさり歩いた。ある日由紀は、若手建築家本間洋一郎(宮内洋)と知りあった。その頃、絹枝も安川と別れて上京、新しいパトロンの戸間口の資金でバーのマダムに収まっていた。母と再会して、彼女の店を手伝う由紀に異常な執心をみせたのは金融業の松村だった。松村(遠藤辰雄)から多額の融資を受け、弱みを握られている戸間口は、由紀を彼に提供しようと工作する。一方、由紀は、京都に出張した洋一郎の後を追った。そこには、かつて洋一郎がフランスに留学していた頃の恋人サンドラ(サンドラ・ジュリアン)が、昔の愛を復活させようと待っていたが洋一郎の気持ちは変わらず、サンドラは日本を去る。洋一郎は由紀との結婚を決意するが、彼の父松村は由紀を強姦、その上松村は身ごもった絹枝まで強姦して流産させてしまう。夢を砕かれた由紀は、彼らへの復讐を胸に秘め、松村の妾兼秘書として松村家に入った。そこから由紀の復讐劇が始まるのだった。


 男にとって、女は基本的に淫らであってほしいというのが、いつの時代も根強い願望としてあるらしい。その願望が一挙に噴き出すのがポルノ映画だ。女性から見ると「そんな馬鹿な事はない」と反論される世界が繰り広げられるのがポルノの世界なのだ。池玲子の主演3作目となる本作もタイトル『現代ポルノ伝先天性淫婦』(これもまた天才・岡田茂の手に依るもの)という読んで字の如く性に対して淫らな女性が主人公である。何せ、冒頭のタイトルバックから、いきなり池のレズシーン。ソフトコアな映像に、池演じる女子大生が語るモノローグ…鈴木則文監督が最も得意とする世界観だ。彼女の母も男関係にだらしなく、その血を引く自分にも、母のような淫乱な血が流れていると思っている主人公が、様々な男たちによって翻弄される姿を描いている。当初、鈴木監督は、主人公をかつて世間を騒がせていた連続暴行魔・小平義雄の娘だったという設定にしようと考えていたらしい。
 デビュー作がコメディタッチのお色気ものだったのに対して、本作はメロドラマの要素が強い。一人の女の数奇な運命をたどる仕立ては、“赤い疑惑”のような大映テレビドラマを彷彿とさせる。不幸な性(サガ)を持つ女性・由紀を演じる池は、この作品こそが彼女のために作られたと言っても過言ではない程のハマリ役。卒業して母の元に戻ってきたとたんに母のヒモに犯されてしまい、それがトラウマとなって男を拒絶するかと思ったら、数年後には小池朝雄演じるヤクザの幹部と同棲。ところが、他の組との抗争で受けた怪我のために不能となってしまうや、ブルーフィルムの上映会で男あさりを続ける。見方によっては、魔性の女…男に弄ばれる反面、彼女もまた男を食い物にしていく。正に母の淫靡な血を引く“先天性淫婦・由紀”を鈴木監督はネチっこい程のカメラワークで描き出している。特徴的なのは、真俯瞰から捉えたカメラアングルを多用していること。東映ポルノの帝王である鈴木監督は池玲子のボディをどのように捉えれば、効果的に見えるのかを熟知しているようだ。いや、彼女を上にする事で、世の男たちの浅ましさを表現したかったのかも知れない。印象に残るエピソードがある。初めて愛した男の実父(演じる強欲ジジィの遠藤辰雄は、いつもながら感心する…この人は、藤純子演じるお竜さんにもとんでもないジジィだったなぁ)に薬を盛られて動けなくなった由紀は弄ばれるのだが、最初は抵抗するも次第に手を回し自ら受け入れてしまうシーンだ。続いて、彼女の母(円熟の魅力で圧倒する三原葉子の渾身の演技が炸裂!)も遠藤辰雄のジジィに犯されるのだが(こいつには倫理なんて無いのか?)、娘と同じように、最初は抵抗するも受け入れてしまうのだ。その後のポルノの定番となるこの手のシチュエーションを取り入れたのは、本作が最初だったかも。
 共演としてフランスから招いたサンドラ・ジュリアンは、物語には直接関係しないゲスト出演程度だが、異国の人間から見た日本の歌麿の世界を幻想的な映像で描いている。特に、夢の中で3人のヤクザに犯されるシーンは、彼女のきめ細かな肌と男たちの青刺のコントラストが素晴らしい映像美となっていたのには驚かされた。鈴木監督は、こうした優れた映像表現をサラリとやってのけてしまうのだ。

「新手のコールガールかい?あいにく僕は安物は買わない主義でね」宮内洋演じる洋一郎に突然抱きつき「抱いてぇ」と迫る池玲子を平手打ちにして言うセリフ。彼の反応…当たり前だわな。


レーベル:東映ビデオ(株)
販売元: 東映ビデオ(株)
メーカー品番: DSTD-2816 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 4,253円 (税込)

昭和46年(1971)
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