エロ将軍と二十一人の愛妾
可愛い奴め喰べてしまうぞ!

1972年 カラー シネマスコープ 92min 東映京都
企画 天尾完次 監督、脚本 鈴木則文 助監督 藤原敏之 脚本 掛札昌裕 撮影 わし尾元也 
音楽 伊部晴美 美術 竹川輝夫 録音 野津裕男 照明 井上孝二 編集 神田忠男
出演 池玲子、渡辺やよい、三原葉子、女屋実和子、城恵美、林真一郎、大泉滉、杉本美樹、安部徹
名和宏、由利徹、岡八郎、川谷拓三、衣麻遼子、一の瀬レナ、堀陽子、ひろみどり、丘ナオミ


 諸大名から献上された諸国の美女が大奥に集合した、好色家として有名な徳川11代将軍家斉の時代を『女番長ブルース牝蜂の逆襲』の池玲子主演で描く艶笑ポルノグラフィー。監督は東映プログラムピクチャーの旗手『緋牡丹博徒一宿一飯』を始めとする任侠ものからピンク映画に至るまで幅広く手掛けている鈴木則文の『徳川セックス禁止令 色情大名』に続く大型ポルノ時代劇第二弾。脚本は鈴木則文監督と共に『恐怖女子高校 女暴力教室』の掛札昌裕が共同で執筆している。二人は世界の名作を見直して“王子と乞食”に目を付けたという。元々、前作『徳川セックス禁止令 色情大名』の冒頭のナレーションからヒントを得た岡田茂が“二十一人の愛妾”という設定を拡大して本作が誕生した。当初“将軍と二十一人の愛妾”だったタイトルの前に“エロ”をつけたのは岡田茂のアイデア。撮影は『木枯し紋次郎 関わりござんせん』のわし尾元也が担当している。全編フラットで陰影のついていない明るめのライティングが特徴的な本作は、あえて鈴木監督が隅々まで見えるように(その方がバカっぽく見えるから…という理由から)照明を依頼したという。そのため、ポルノ映画特有の陰湿さはまるで感じられず、どこか能天気なイメージが強くなっている。


 徳川20代将軍家治が急逝したため、幕府では、田沼派、松平定信派と世継問題でもめていた。田沼意次(安部徹)は家治の愛妾お八重に取り入り、自分の押す一ッ橋豊千代(林真一郎)を強引に11代将軍と決めてしまった。一ッ橋家の御用人嘉門は豊千代を吉原に連れ込みおいらんの揚巻に筆下しを頼んだ。ところがその最中に、突然揚巻が膣けいれんを起こして、分離不可能となってしまった。新将軍、初登場の日は刻々と迫り田沼及び、御用人の岩本らは困惑する。折しも天井裏に忍び込んで、それらを聞いていた女鼠小僧弁天のお吉(池玲子)は、二人の前に姿を現わし、好策を提案。それは、お吉と同じ長屋に住む豊千代とうり二つの角助(林真一郎)を身代りに立てるというのである。田沼はこの提案に乗り、なんとか将軍就任をすませた。一方、角助は身代りとはなったものの、根っからの女好きで、夜、大奥の天井裏へ登り、側女たちの入浴風景などを覗き回った。ところがそこへお吉が現われ、角助は彼女の正体を知った。幕府に怨みを持つお吉は角助に無茶苦茶にひっかき廻してほしいというのである。さて角助大奥初お成り。彼は持前の好色を発揮して次々と美女と関係していった。一方田沼と松平の政争は相変らずで将軍が好色と知ってからは、それぞれ趣向をこらして美女を献上する。以来、大奥は側女の数も増え空前の賑やかさとなった。田沼はそろそろ豊千代と角助を替るべく画策するが、お吉の邪魔にあって失敗。やがて、近衛大臣の息女茂子(杉本美樹)が大奥入りとなった。そしてお吉の思惑通り、茂子は角助の子を身篭もった。数年後角助は病死し、家斉が返り咲いたが、彼には嫡子が無く、角助の子が代々徳川家の跡を次いでいったのである。


 名作“王子と乞食”を東映ピンク映画で鈴木則文監督が作ると、こうなる。笑い転げながら何度「馬鹿だなぁ〜」と、膝を叩いた事だろうか…。こういう下らなさを楽しめない人って勿体ないとすら思う。女が苦手で、周りの側近たちをヤキモキさせる徳川家斉と、家斉に瓜二つで女をこよなく愛するスケベ町人・角助が入れ替わって起こすドタバタ時代劇。大体、前の将軍が突然、死んじゃったものだからといって「早く世継ぎを!」ってな感じで、嫌がる家斉に無理やり性交させた挙げ句、膣痙攣で動けなくなるという設定がお馬鹿の極地。脚本を書いた鈴木監督と名コンビ掛札昌裕は二人で大笑いしながら楽しんで書き上げたに違いない。
 娼婦と合体したまま動けなくなってしまった家斉に替わって政権を司る事になった角助。ところが、そいつのお目当ては権力よりも大奥…登城した早々、側室を失神させ、それに飽きたらず、横にいる待女を次々と手込めにしてしまう。(最後に残った老尼と目が合って…という場面は最高に笑えます)この最高のシチュエーション!東映が得意とする時代劇の衣装とセットを最大限の武器として、豪華絢爛なポルノ時代劇を作り上げたのだ。今でも色褪せずに鑑賞に耐えられるのは、時代劇に関しては他社の追随を許さない技術や衣装、セットなどの財産があったからに他ならない。今回、裸になるシーンが少ない我らが池玲子が女ねずみ小僧・お吉に扮し、(猫のように鋭い眼差しを持つ彼女の顔立ちが意外に合う)小雨の降る中、刺客相手に太刀回りを披露するシーンひとつ取っても普通の時代劇と引けを取らない。また、中国からやって来た役人たちが献上するパンダを小人の男たちが演じるなどシュールな演出を施す等、最後までサービス満載。
 しかし、鈴木監督は単なる艶笑時代劇で終わらせる事はせず、権力を身に付けた途端に、女に不自由しなくなった主人公の暴走をシニカルに描く。夜な夜な大奥に夜這いをかける主人公…一方、将軍・家斉がすり替わった事を利用して幕府転覆を企むお吉。角助がお吉の正体を知ってからの中盤以降、それまでコメディタッチで進んでいた作風に変化が訪れる。暴走に歯止めが利かなくなって傍若無人の振る舞いを繰り返す角助。何かにとりつかれたその姿は単なる色ボケだった角助ではなくなっている。対象的に大奥に招いた幼なじみ・お菊(渡辺やよいが可愛らしさとエロティシズムを兼ね備えて実に良い)が、失望から自ら命を絶ってからドロドロの様相を呈してくる。鈴木監督と掛札昌弘の脚本の上手いところは笑いと怒りを巧みに交差させながら権力の残酷さと滑稽さを表現しているところだ。痛烈な政治批判を交えるのは前作『徳川セックス禁止令 色情大名』では、国が日活ロマンポルノを摘発した事を“国家がセックスを管理するのは許されない”と糾弾した鈴木監督。本作でも権力に対する怒りは治まらず、権力の中で崩壊していく人間たちを描く事で「あんたらだって所詮、同じじゃないか」と言ってるように思えたのだが…。

「シッチャカメッチャカ引っ掻き回しゃいいんだよ。こんなお城…」父親を権力によって殺された池玲子演じるお吉のセリフ。そして、計画通りお吉に恋する角助が、それを実行する事となるのだ。


レーベル:東映ビデオ(株)
販売元: 東映ビデオ(株)
メーカー品番: TOE_DSTD-2723 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 4,253円 (税込)

昭和46年(1971)
温泉みみず芸者
女番長ブルース
 牝蜂の逆襲
現代ポルノ伝
 先天性淫婦

昭和47年(1972)
エロ将軍と
 二十一人の愛妾
恐怖女子高校
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女番長ゲリラ
女番長ブルース
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緋ぢりめん博徒
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 のら犬機動隊
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 葬いは俺が出す

昭和48年(1973)
やさぐれ姐御伝
 総括リンチ
恐怖女子高校
 アニマル同級生
恐怖女子高校
 不良悶絶グループ
恐怖女子高校
 暴行リンチ教室
女番長
仁義なき戦い代理戦争
前科おんな 殺し節
不良姐御伝
 猪の鹿お蝶

昭和49年(1974)
逆襲!殺人拳
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女番長 タイマン勝負
新仁義なき戦い
忘八武士道 さ無頼

昭和50年(1975)
喜劇 特出しヒモ天国
県警対組織暴力
仁義の墓場
暴力金脈

昭和54年(1979)
黄金の犬
総長の首




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