ロビンソンの庭
緑と廃墟を神秘と幻想で描いた衝撃のスーパー・カルトムービー。

1987年 カラー ビスタサイズ 119min レイライン
製作 浅井隆 監督、脚本 山本政志 脚本 山崎幹夫 原作 井伏鱒二 撮影 トム・ディッチロ、苧野昇
照明 安河内央之 音楽 じゃがたら、吉川洋一郎、ヘムザ・エル・ディン 美術 大澤稔、林田裕至
出演 太田久美子、町田康、上野裕子、CHEEBO、OTO、坂本みつわ、IZABA、横山SAKEBI、溝口洋
利重剛、室井滋


 『ロビンソンの庭』は、日常を抜け出し都市の中の緑に覆われた廃墟に移り住むヒロイン・クミを中心に、終始不気味なまでの静寂の中で進行してゆく。登場人物の感情や行動は一切説明されることがなく、光と音と色に彩られた印象的なシーンの連続が、いつしか官能と神秘に満ちた緑の世界へと導き、倦怠の中にも次代へつながるエネルギーと希望を画面にみなぎらせている。前作『闇のカーニバル』において国外の映画祭で高い評価を得ている山本政志が監督を務めている。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のカメラマンであるトム・ディッチロや『少年と黒い馬』で知られるスーダンの民族音楽家ヘムザ・エル・ディンをはじめ国内外で活躍するスタッフが結集されている。廃墟を照らす幻想的なライティングやナチュラルな柔らかい照明は安河内央之が担当。キャスティングに関してもプロの俳優を極力避けて、ミュージシャンやストリートの遊び人を中心とした国際色溢れるメンバーで構成されている。本作はベルリン映画祭やロカルノ映画祭をはじめとする数々の映画祭で賞を獲得し注目を集めた。


 クミ(太田久美子)は緑のある住宅街の一画の外国人ハウスに住んでいた。彼女は定職をもたず、ドラッグを売買したりしながら生活している。ある日、ボーイフレンドのキイと友人のマキと一緒にアフリカ料理店で食事をした。最近、世の中がおかしくなってきており、クミの仲間にも捕まる者や入院する者が出てきている。マキは地軸が狂ってきたのが原因だといい、タイのコサムイに脱出しようと提案した。酔っ払って帰る途中で緑に囲まれた廃墟を見つけ、そこが自分の家のように思えてきたクミは、翌日、廃墟へ引っ越してきた。クミは畑をつくってキャベツを植え、部屋の壁にはペインティングを施し、夜は屋上で星を眺めたりしながら快適な生活を送っていた。廃墟に移り住んで何カ月かたったある朝、クミは体がシビれているのに気がついた。それでも農作業を続けていたが、体の痛みは日ごとに増してくる。クミは衰弱し、痛みはついに脳にまで達し、ときおり幻を見るようになった。あるとき彼女は雑草の生い茂る畑に大きな穴を掘り始めた。いつしかクミの姿は穴に吸い込まれるように消えてしまった。まるで世界が発狂したかのように、あたりには全く人影がなく廃墟は完全につたの葉に覆われてしまった。


 う〜ん…意味不明だ。しかし、その意味不明な混沌とした映像に惹かれてしまうのが不思議だ。山本政志監督が作り出す世界を観ているとトランス状態に陥りそうになる。思い返せば、この映画が作られた時代…っていうか山本監督が活動を開始した昭和50年代後半は社会全体によく訳が分からないノイズみたいな物が氾濫していた。映画がアートとして実験的に制作されていた真っ只中に山本監督は産声を上げたのだろう。塚本晋也監督がノイズと不協和音の『鉄男』を発表したのは本作のわずか2年後になる。外国人(不法滞在者っぽくもあり漂流者と表現すべきか)が、住む古いアパート(というかコミュニティーと表現した方が正しいような場所)で住人たちが交わす日本語と英語は殆ど意味を成さず、言葉は記号でしかない。太田久美子演じる主人公は、怪しげな物を住人たちに売っては街を徘徊して、夜は仲間と酒を飲むという日々を送っている。勿論、その設定にも意味は無く、物語は場面を結ぶための線でしかない。都会のド真ん中にある学校らしき廃墟を住処として敷地内に野菜を植える主人公。建物にペインティングを施し、各部屋を装飾していく…と、ここまでなら付いて行けるのだが、次第に彼女が常軌を逸し始めるあたりから意味不明な言葉と奇声に耳を覆いたくなる。何かにとりつかれたように痩せ細っていく主人公の姿(本当に演じる太田久美子は役作りとして激ヤセしていくのだ)に山本監督は何を投影したかったのか…正直、今も理解できないでいる。彼女は畑の真ん中に大きな穴を掘り、姿を消してしまう。その後、街は崩壊して(ある意味、人間文化の崩壊)緑が侵食する映像が映し出される。主人公が掘っていた穴に彼女自身を埋めて緑の栄養分にしたとでも言うのだろうか?彼女の思い(執念?)が植物に宿り、社会を覆い尽くしたのだろうか?だとしたら、世界を鉄で埋め尽くそうとした『鉄男』の原点は、ココにあるのかも知れない。取りあえずロビンソン・クルーソーの庭というタイトルの意味から紐解いて行くのも手なのだが、未だその気力が無いため実現しないままだ。
 主人公・太田久美子の反体制的でアナーキーな演技(これって演技と呼べるのか?)は、妙に生っぽくて良かった。また、彼女に絡んでくる少女を演じた上野裕子も物語のアクセントとして最高の存在感を見せてくれる。トム・ディッチロと苧野昇による乾いた色彩の画が素晴らしく、屋内シーンにおける神秘的なライティングを作り出した安河内央之の照明が作品に抑揚を与えていた。また、本作で無くてはならない廃墟をペインティングした美術スタッフもイイ仕事をしている。本作は海外の映画祭で多大な評価を得て、招待されるも日本ではヒットする事なく終わってしまった。果たして、映画祭というものは、その場だけのイベントでしかあり得ないのだろうか?それとも商業ベースに乗らない映画は映画として認知されないのだろうか?映画を大衆系と芸術系に分かれるとするならば本作のような作品を発表出来る場をもっと増やすべきだと思う。。

本作において言葉は殆ど意味を成さない。強いて言うならばセリフは全て記号であり映像の中に伝えたいもの全てが含まれている。


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リージョンコード:ALL
映像規格:NTSC ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
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昭和58年(1983)
居酒屋兆治

昭和60年(1985)
魔の刻
夜叉

昭和61年(1986)
ザ・サムライ
ノイバウテン 半分人間
ビリィ★ザ★ギッドの新しい夜明け

昭和62年(1987)
新宿純愛物語
ロビンソンの庭

昭和63年(1988)
1999年の夏休み
海へ See You

平成1年(1989)
キスより簡単
風の又三郎
バカヤロー!2
 幸せになりたい
cfガール

平成2年(1990)
われに撃つ用意あり

平成3年(1991)
あいつ
無能の人
王手

平成4年(1992)
寝盗られ宗介

平成5年(1993)
月はどっちに出ている
ヌードの夜

平成6年(1994)
夢魔
RAMPO奥山監督版
119

平成7年(1995)
RAMPOインターナショナルVer
人でなしの恋

平成8年(1996)
男たちのかいた絵

平成9年(1997)
秋桜
東京日和

平成10年(1998)
秘祭
元気の神様

平成11年(1999)
白痴
黒の天使 Vol.2

平成12年(2000)
フリーズ・ミー
ホーム・スイートホーム

平成13年(2001)
連弾
DRUGドラッグ
TOKYO G.P.

平成14年(2002)
およう
黄昏流星群
 星のレストラン

平成15年(2003)
ホーム・スイートホーム2 日傘の来た道

平成16年(2004)
花と蛇
サヨナラCOLOR

平成17年(2005)
ゴーヤーちゃんぷるー

平成18年(2006)
おばちゃんチップス
旅の贈りもの0:00発

平成21年(2009)
山形スクリーム




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