侠骨一代
恥に生きるな男で生きろ!この日本の任侠を意気地で守った暴れドス!

1967年 カラー シネマスコープ 92min 東京東映
企画 俊藤浩滋、吉田達 監督 マキノ雅弘 原作 富沢有為男 脚色 村尾昭、松本功、山本英明
撮影 星島一郎 音楽 八木正生 美術 藤田博 編集 田中修 録音 広上益弘 
スチール 遠藤努 照明 川崎保之丞
出演 高倉健、大木実、石山健二郎、志村喬、宮園純子、藤純子、山本麟一、今井健二、相馬剛三、
伊達弘、岡村耕作、須賀良、室田日出男、滝島孝二、沼田曜一、八名信夫、山田明、日尾孝司、
山之内修、河合絃司、潮健児、南原宏治、岡部正純、植田灯孝、久保一、遠藤辰雄、沢彰謙


 富沢有為男の原作(集団形星刊)を、「兄弟仁義 関東命知らず」の村尾昭、「北海遊侠伝」の松本功、山本英明の三人が共同で脚色した本作。従来の任侠映画とは異なり、主人公の波瀾万丈とも言える半生を描いた名匠マキノ雅弘が監督した任侠映画の傑作。マキノ監督自身が本作における藤純子の演技が最高と言わしめる通り、主人公の今は亡き母親と身を挺して主人公を助ける女郎の二役を熱演。女優としての魅力を存分に引き出した。特にエンディングの主人公を助けるために身を売った彼女が牛乳ビンを片手に颯爽とした出立ちで船の甲板に立っている姿は最高の演技と称されている。撮影は長年に渡ってマキノ監督とコンビを組んでいた「昭和残侠伝」等の星島一郎が担当している。


 昭和の初期、兵期を満了した伊吹竜馬(高倉健)は、“この乱世を男らしく生きよ”という呑海和尚( 石山健二郎)の言葉通り、芝浦の飯場に入って生計を立てるようになった。しかし、芝浦一帯は宍戸組が牛耳っており、人足のピンハネからイカサマ博奕で労働者から金を絞りあげる非道ぶりを見せていた。竜馬はこれに真っ向うから対決、宍戸組から刺客が放たれたが、女郎のお藤(藤純子)の機転によって助けられた。お藤は竜馬の死んだ母親に瓜二つであったため、竜馬は恋愛とは違う目で彼女を見るようになる。竜馬の誠実さを認めた坂本組の親方喜之助(志村喬)は、竜馬を組に引き抜き、運送業の手伝いをする内に、竜馬は喜之助の大きさに惚れこんでしまった。ところが、そこでも宍戸組が芝浦港を独占し、荷揚料を倍額に吹っかけてきた。二つの組の抗争が始まろうとしたその時、月島の岩佐組が仲介役を買って出た。更に岩佐組の代貸小池(大木実)は、兵隊時代、竜馬の親友だった。おかげで、芝浦進出が認められるようになった坂本組は、わずか一年後には東京市水道局の鉄管運搬の入札を得て、大きく飛躍しようとしていた。しかし、ある日喜之助が何者かの銃弾に倒れてしまう。入札に落ちた岩佐組と宍戸が手を握り、鉄管作業の独占を画策していたのだ。小池は竜馬の身を案じ鉄管作業から手を引くように話しをするものの、度重なる厭がらせや運搬用トレーラーを破壊されるなど、坂本組は資金に行き詰まってしまう。しかし、お藤が身を売って金を作ることで仕事を再開出来るメドが立つのだが、竜馬は単身岩佐と穴戸の元へ殴り込みをかけ、小池は竜馬をかばって倒れてしまう。怒りが頂点に達した竜馬は二人を追いつめ息の根を止めるのだった。全てが終わり、平穏を取り戻した芝浦だが、同じくして港から大陸へ出航していく船上には身を売ったお藤の姿があった。


 はっきり言おう。これは藤純子の映画である。彼女が難しく重要な役を演じているから他の出演者の株を全て奪っているから…と、いう単純な理由からではない。主役はあくまでも高倉健であり、健さんが一本筋の通った男気溢れる正義のヤクザを演じているからこそ、それを目当てに映画館へやって来たファンが殆どである事には異論はない。だが、これは藤純子の映画!『緋牡丹博徒』のお竜さんも良いのだが、それ以前に、これほどカッコいい女性を演じていたのかと思うと、東映初の任侠映画ヒロインに抜擢された事も大いにうなずける。彼女が演じる役は、健さん演じる主人公、竜馬の若い頃の母親と、現在で竜馬と知り合う女郎、お藤の二役を演じている。方や、子供の食べ物を気遣う幸薄いが優しい母親…もう一方の女郎は男どもを軽くあしらい、激動の時代をたった一人で地面にしっかりと足を踏ん張って生きているような女性である。兵役が終わり東京に戻って来た竜馬が、小料理屋でお藤を初めて見た時のシーンは、あまりの色っぽさに惚れ惚れしてしまった。客を送り出し、男に絡まれ「このアマ舐めるなよ」という男に対して「そんな汚い顔舐めないわよ」と軽く言い放つ彼女の姿は、どんな女侠客よりも優雅さと艶やかさを兼ね備えている。そして名匠マキノ監督が用意したという牛乳を常に飲んでいるという設定が、功を奏し、奥深い人物設定が完成された。彼女の顔に母親の面影を見た竜馬が足げく通っては話ししかせず、その度にお金を置いて帰っていく…そんな男に次第に惹かれる女の表情を美しく捉えているのは、やはり女性の描き方に関しては天下一品の異名を取るマキノ雅弘監督だから成せる業。最期には、愛する男のために身を売って満州へ旅立つのだが、仲間の女性に「アタシって…アバズレじゃないだろう?」と言いながら首にスカーフを巻き付ける仕草は、絵画的な美しさを持っている。そして、ラスト…満州へ行く船上で、愛する竜馬を思いつつ、牛乳を飲む姿は実にカッコ良く凛々しく、そして一途な女の悲哀と幸せの両方を感じさせるのだ。
 勿論、本作は高倉健が失意のどん底から這い上がり、ひとつの組を任されるドラマが主体であるから人情的な男同士の友情や志村喬演じる親分の粋な姿など任侠映画に無くてはならない要素は随所に溢れている。ただ、従来のドラマと違い、高倉健演じる主人公は決してヒーローとしては完璧ではないところだ。彼は、泣きもすれば母親の死という現実を前にして失意の中で自殺未遂を図ったりする。しかし、そんな彼が男として再度、人生を賭ける大博打に出られたのは紛れも無く藤純子が演じる母親と瓜二つの女郎のおかげなのだ。だから…この映画は主役は高倉健だが、藤純子の映画なのである。

「あたしは達磨だよ。寝たり起きたり…」女郎のお藤が初めて竜馬と出会った時のセリフ。そして竜馬に心底惚れた彼女が自らの身を売って竜馬の窮地を救った時に仲間の女郎に語る「あばずれじゃなかったでしょう?」とつぶやくセリフが実に切なく泣かせるのだ。


レーベル: 東映ビデオ(株)
販売元: 東映ビデオ(株)
メーカー品番: DCTD-02517 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 2,835円 (税込)

昭和38年(1963)
人生劇場飛車角
人生劇場
・続飛車角

昭和39年(1964)
人生劇場
・新飛車角
日本侠客伝

昭和40年(1965)
網走番外地
昭和残侠伝
網走番外地
・北海篇
・望郷編
続・網走番外地
日本侠客伝
・関東篇

・浪花篇
明治侠客伝
/三代目襲名

昭和41年(1966)
網走番外地
・南国の対決
・大雪原の対決
・荒野の対決
昭和残侠伝
・一匹狼
・唐獅子牡丹
日本侠客伝
・雷門の決斗

・血斗神田祭

昭和42年(1967)
網走番外地
・決闘零下30度
・悪への挑戦
・吹雪の斗争
昭和残侠伝
・血染の唐獅子
博奕打ち
・一匹竜
・不死身の勝負
侠骨一代
日本侠客伝
・斬り込み
・白刃の盃

昭和43年(1968)
緋牡丹博徒
・一宿一飯
人生劇場
・飛車角と吉良常

新網走番外地
博徒列伝
博奕打ち
・総長賭博
・殴り込み
日本侠客伝
・絶縁状

昭和44年(1969)
昭和残侠伝
・唐獅子仁義
・人斬り唐獅子
緋牡丹博徒
・花札勝負
・鉄火場列伝
・ 二代目襲名
博奕打ち
・必殺
日本侠客伝
・花と竜

昭和45年(1970)
昭和残侠伝
・死んで貰います

緋牡丹博徒
・お竜参上

博奕打ち
・流れ者
日本侠客伝
・昇り龍

昭和46年(1971)
昭和残侠伝
・吼えろ唐獅子
緋牡丹博徒
・仁義通します
・ お命戴きます
博奕打ち
・いのち札
日本侠客伝
・刃

昭和47年(1972)
関東緋桜一家
昭和残侠伝
・破れ傘
博奕打ち
・外伝




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